探偵業法とは?依頼者が知っておくべき探偵のルール

「探偵に調査を依頼したいけど、どんなルールがあるんだろう?」
「もしかして、探偵って何でもできるわけじゃないの?」

もしかしたら、あなたは今、そんな疑問や不安を抱えているかもしれません。大切な家族やパートナーの問題、ビジネス上のトラブルなど、デリケートな悩みを解決するために探偵の力を借りたいと考えるのは自然なことです。

しかし、「探偵業」という言葉から、どこかミステリアスで、法律の及ばない領域のように感じる方もいるかもしれませんね。実際に「探偵は何をしても許される」といった誤解や、違法な業者とのトラブルに巻き込まれてしまうケースも少なくありません。

ご安心ください。探偵の業務は「探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)」という法律によって厳しくルールが定められています。この法律は、依頼者であるあなたを守り、健全な探偵業界を育むために存在するのです。

この記事では、探偵業法とは何かという基本的な知識から、探偵が依頼者に対して負う義務、そして何よりも重要な信頼できる探偵を選ぶための具体的なポイントまで、初心者の方にもわかりやすく徹底的に解説します。

この記事を読み終える頃には、探偵依頼に関する不安が解消され、安心して信頼できる探偵に相談できるようになるでしょう。後悔のない選択をするために、ぜひ最後まで読み進めてください。

探偵業法とは?なぜ必要なのか

「探偵業法」という言葉を耳にしたことはあっても、具体的にどのような法律なのか、なぜ存在するのかを詳しく知る方は少ないかもしれません。しかし、探偵に調査を依頼しようと考えているあなたにとって、この法律の理解は非常に重要です。

まず結論からお伝えすると、探偵業法とは、探偵の業務が適正に行われるようにルールを定め、依頼者の安全と探偵業界全体の健全性を守るための法律です。

なぜこのような法律が必要とされたのでしょうか。その背景には、探偵業界が抱えていたいくつかの課題がありました。

探偵業法の目的と役割

探偵業法の主な目的は、以下の3点に集約されます。

  1. 依頼者の保護
    探偵業務は個人のプライバシーに深く関わるため、悪質な業者による不当な行為や、ずさんな調査によって依頼者が不利益を被るリスクがありました。探偵業法は、契約時の説明義務や不当な請求の禁止などを定めることで、依頼者が安心してサービスを利用できる環境を整備しています。
  2. 探偵業務の適正化
    探偵の調査方法が、ストーカー行為や不法侵入などの違法行為に抵触するケースも過去には存在しました。この法律によって、探偵ができることとできないことの線引きが明確になり、違法な調査を排除し、業務の適正化が図られています。
  3. 業界の健全化と信頼性の向上
    法律による規制がなかった時代は、探偵業界全体が「何をしてもいい」というグレーなイメージを持たれがちでした。探偵業法によって一定のルールが設けられ、公安委員会への届出義務などが課せられたことで、業界全体の信頼性が向上し、安心して利用できる環境が整えられています。

これらの目的により、探偵業法は依頼者が安心して探偵サービスを利用できる基盤を提供し、同時に探偵業者自身も法的な枠組みの中で責任ある業務を遂行できるようになっています。

探偵業法が制定された背景

探偵業法が制定される以前、探偵業は特別な資格や許可を必要とせず、誰でも自由に開業できる状態でした。この unregulated な状況が、以下のような問題を引き起こしていました。

  • 悪質業者の横行
    高額な料金を不当に請求したり、ずさんな調査で結果を出さなかったり、さらには恐喝や脅迫に発展するような悪質な探偵業者も存在しました。依頼者は泣き寝入りせざるを得ない状況に陥ることも少なくありませんでした。
  • 人権侵害のリスク
    探偵の調査活動は、尾行や張り込み、聞き込みなど、個人のプライバシーに深く踏み込む性質を持っています。法律による規制がないため、行き過ぎた調査や、個人情報が不適切に扱われることで、対象者の人権が侵害されるリスクがありました。例えば、ストーカー行為に類似する調査や、不正な手段で個人情報を入手するといった問題が発生していました。
  • 社会的な信頼の低下
    一部の悪質業者の存在が、真面目に業務を行う多くの探偵業者全体のイメージを損ない、社会的な信頼を低下させていました。「探偵は怪しい」「何をされるかわからない」といったネガティブな認識が広がり、本当に困っている人が探偵に依頼することをためらう一因にもなっていました。

このような状況を改善し、探偵業が社会に貢献する健全なサービスとして機能するために、探偵業法の制定が強く求められるようになりました。これにより、探偵業者は公安委員会への届出が義務付けられ、業務の適正化と依頼者の保護が図られるようになったのです。

探偵業法は、探偵と依頼者の双方が安心して関わり、トラブルを未然に防ぐための重要な役割を担っていると言えるでしょう。

探偵が守るべき義務と依頼者の権利

探偵業法は、単に探偵業の適正化を促すだけでなく、依頼者であるあなたの権利を保護するための具体的な義務を探偵業者に課しています。これらの義務を知ることは、探偵に安心して依頼し、万が一のトラブルを避ける上で不可欠です。

ここでは、探偵業者が守るべき主な義務と、それに対応する依頼者の権利について詳しく見ていきましょう。

契約前の重要事項説明義務

探偵業法において、最も重要な義務の一つが「重要事項の説明義務」です(探偵業法第6条)。これは、依頼者が契約内容を十分に理解し、納得した上で依頼できるようにするためのものです。

探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を結ぶ前に、以下の事項を記載した書面を交付して説明しなければなりません。

  • 探偵業者の名称、所在地、登録番号:どこの誰がサービスを提供するのかを明確にします。
  • 探偵業務の内容:具体的にどのような調査を行うのかを明確にします。例えば、浮気調査、人探し、企業調査など、依頼内容に応じて詳細に説明されます。
  • 期間、方法:調査にかかるおおよその期間や、どのような方法(尾行、張り込みなど)で調査を進めるのかを説明します。
  • 料金の額、支払い方法:最もトラブルになりやすい点です。総額、内訳(人件費、交通費、機材費など)、追加料金の有無、支払い時期、支払い方法を明確に示します。
  • 契約解除に関する事項:契約を途中で解除する場合の条件や、違約金、返金に関するルールを明確にします。
  • その他、内閣府令で定める事項:例えば、探偵業務の実施によって個人の権利や利益を侵害する恐れがある場合の対処方針などが含まれます。

この説明を受けた上で、依頼者は書面の内容を確認し、署名または記名押印をしてから契約を締結します。もし探偵業者がこの説明を怠ったり、虚偽の説明をしたりした場合は、行政処分の対象となるだけでなく、民事上の責任を問われる可能性もあります。

依頼者としては、この重要事項説明の際に、疑問点は遠慮なく質問し、内容を完全に理解してから契約書にサインすることが大切です。曖昧な点が残る場合は、契約を急がず、一度持ち帰って検討する勇気も必要です。

探偵の秘密保持義務と罰則

探偵業法において、依頼者が特に重要視すべきポイントの一つが「秘密保持義務」です(探偵業法第10条)。探偵は、業務上知り得た個人情報や調査内容について、厳重に秘密を守る義務があります。

具体的には、以下の秘密保持が義務付けられています。

  • 依頼者の秘密:依頼者自身が誰であるか、なぜ探偵に依頼したのかといった個人情報、および依頼内容に関する秘密。
  • 調査対象者の秘密:調査によって知り得た対象者のプライバシーに関する情報。
  • 調査方法や結果の秘密:調査の手法や、得られた証拠の内容など、業務に関するあらゆる情報。

この秘密保持義務は、探偵業を廃止した後も継続すると明確に定められています。つまり、一度知り得た情報は、たとえ探偵業を辞めたとしても、生涯にわたって口外してはならないということです。

もし探偵業者がこの秘密保持義務に違反し、業務上知り得た秘密を漏らした場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑事罰が科せられます(探偵業法第17条)。この罰則は、探偵業が個人のプライバシーに深く関わる性質を持つため、その重要性を鑑みて設けられています。

依頼者としては、信頼できる探偵を選ぶ上で、この秘密保持義務を厳守する姿勢があるかを確認することが重要です。契約書に秘密保持に関する条項が明記されているか、また具体的な秘密管理体制について質問してみるのも良いでしょう。

違法な調査行為とその境界線

探偵業法は、探偵業務の適正化を図るために、探偵が行ってはいけない行為も明確に定めています(探偵業法第9条)。これらの「違法な調査行為」を知ることは、依頼者が不当な調査に加担しないため、そして不法な探偵業者を見抜くために非常に重要です。

探偵業者が行ってはならない行為は以下の通りです。

  • 人の生活の平穏を害するような方法での調査:例えば、過度なつきまといや嫌がらせ、無許可での住居侵入、盗撮・盗聴(犯罪に該当する場合)など、対象者の日常生活を著しく妨げる行為は禁止されています。
  • 個人の身体、生命、財産、プライバシーを侵害する行為:暴行や脅迫、不正アクセスによる個人情報の取得、差別的な目的での調査などが該当します。
  • 差別的な取扱いを目的とした調査:人種、信条、性別、社会的身分、病歴などを理由とした差別を目的とする調査は禁止されています。
  • ストーカー行為等規制法に違反する行為:ストーカー行為に該当するようなつきまとい行為は明確に禁止されています。
  • 犯罪行為に該当する行為:もちろん、探偵業務であっても、刑法やその他の法律に違反する行為(例:器物損壊、窃盗、電磁的記録不正作出など)は一切許されません。

探偵業者は、これらの違法行為を行わない義務を負うだけでなく、依頼者からの依頼であっても、上記の違法行為を伴う調査は拒否しなければなりません(探偵業法第9条第1項)。もし依頼者が違法行為を要求してきた場合、探偵業者はその依頼を断る義務があるのです。

依頼者としては、探偵との相談時に、例えば「〇〇さんの家に不法侵入してほしい」「盗聴器を仕掛けてほしい」といった依頼をしても、優良な探偵であればきっぱりと断ってくれます。もし、そのような依頼に応じてしまう、あるいは示唆するような探偵であれば、その業者との契約は絶対に避けるべきです。違法な調査に加担してしまうと、依頼者自身も法的な責任を問われるリスクがあることを理解しておきましょう。

探偵業の届出制度

探偵業を営む上で、最も基本的なルールの一つが「公安委員会への届出義務」です(探偵業法第4条)。探偵業を始めようとする者は、営業を開始する日の前日までに、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に届出書を提出しなければなりません。

この届出制度は、探偵業者の身元を明確にし、悪質な業者の参入を防ぐことを目的としています。届出をすると、探偵業者は「探偵業届出証明書」という書類を受け取ります。この証明書には、届出番号や営業所の名称、代表者の氏名などが記載されています。

届出が受理された探偵業者は、その営業所の見やすい場所に、以下の事項を記載した標識を掲示することが義務付けられています(探偵業法第8条)。

  • 探偵業の名称
  • 探偵業届出証明書の番号
  • 法人である場合はその代表者の氏名
  • 個人の場合はその氏名

この標識は、依頼者が探偵業者が法に基づき適正に営業しているかを確認するための重要な手がかりとなります。もし相談に行った探偵事務所にこの標識が掲示されていない場合や、届出番号を尋ねても教えてくれない場合は、違法な探偵業者である可能性が高いので注意が必要です。

探偵業の届出制度は、依頼者が安心して探偵を選べるようにするための、最初の、そして最も重要なチェックポイントと言えるでしょう。

依頼者が探偵を選ぶ際のチェックポイント

ここまで、探偵業法が依頼者を守るためにどのような役割を果たしているか、そして探偵業者が負うべき義務について見てきました。これらの知識を踏まえた上で、いざ探偵に依頼しようと考えたときに、「どの探偵事務所を選べばいいの?」という疑問が湧くのは当然です。

世の中には数多くの探偵事務所が存在し、その質は玉石混淆です。大切な調査を安心して任せるためには、優良な探偵を見極めるための視点を持つことが不可欠です。探偵業法に則った健全な運営をしている業者かどうか、以下のチェックポイントで確認しましょう。

探偵業届出の確認方法

探偵業法により、探偵業を営むすべての事業者は、管轄の公安委員会に「探偵業開始届出書」を提出し、届出番号を取得することが義務付けられています。この届出番号の有無こそが、その探偵が法律に基づいて適正に営業しているかを確認する最初の、そして最も重要なポイントです。

具体的には、以下の方法で確認できます。

  1. 探偵事務所のウェブサイトを確認する
    多くの探偵事務所は、ウェブサイトの会社概要や特定商取引法に基づく表記のページに、公安委員会への届出番号を明記しています。例えば、「東京都公安委員会届出 第〇〇号」といった形式で記載されています。
  2. 事務所に掲示されている標識を確認する
    探偵業法第8条では、探偵業者に対し、営業所の見やすい場所に届出証明書の番号などが記載された標識を掲示するよう義務付けています。実際に事務所を訪れた際には、この標識がきちんと掲示されているかを確認しましょう。
  3. 直接問い合わせて確認する
    ウェブサイトにも掲示がなく、事務所訪問も難しい場合は、電話やメールで直接「公安委員会への届出番号を教えてください」と問い合わせてみましょう。まともな探偵事務所であれば、すぐに教えてくれるはずです。

もし、これらの方法で届出番号を確認できなかったり、問い合わせても曖昧な返答しか得られなかったりする場合は、その探偵は無届で違法に営業している可能性が高いです。このような業者に依頼すると、後々トラブルに巻き込まれるリスクが非常に高いため、絶対に避けるべきです。

明確な料金体系と見積もり

探偵依頼におけるトラブルで最も多いのが、料金に関するものです。「追加料金が発生して、最終的に見積もりの何倍も請求された」「調査内容が不明瞭なのに高額な料金を取られた」といったケースは少なくありません。

探偵業法では、契約前の重要事項説明義務の中で、料金の額とその算出方法を明確にすることが求められています。優良な探偵事務所は、この義務をきちんと果たし、透明性の高い料金体系を提示しています。

探偵を選ぶ際には、以下の点に注目して料金体系を確認しましょう。

  • 総額表示か、内訳が明確か
    見積もりは「〇〇円」という総額だけでなく、人件費、交通費、機材費、報告書作成費用などが明確に内訳されているかを確認してください。何にどれくらいの費用がかかるのかが不明瞭な場合は要注意です。
  • 追加料金の有無とその条件
    調査が延長された場合や、特殊な機材が必要になった場合など、追加料金が発生する可能性と、その具体的な条件(例:1時間あたり〇円、〇〇費用は別途など)を事前に確認しましょう。後出しで高額な追加費用を請求されることを防げます。
  • 成功報酬制の場合の定義
    「成功報酬」を謳う探偵事務所もありますが、「成功」の定義が曖昧な場合があります。「証拠が取れたら成功」「対象者が異性と接触したら成功」など、具体的な成功の定義と、それに伴う報酬額を必ず確認してください。
  • 書面での見積もり提示
    口頭での説明だけでなく、必ず書面(見積書)で詳細な料金内訳を提示してもらいましょう。後からの「言った言わない」のトラブルを防ぐためにも重要です。

安すぎる料金を提示する業者には注意が必要です。調査の質が低いか、後から高額な追加料金を請求される可能性があります。逆に、相場を大きく超える高額な料金を提示する業者も避けるべきでしょう。複数の探偵事務所から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。

信頼できる探偵の見分け方

探偵業法に基づいたチェックポイントに加え、依頼者として「この探偵なら信頼できる」と感じられる要素も重要です。以下のような点に着目して、総合的に判断しましょう。

  • 相談時の対応
    初めての探偵への相談は、誰にとっても不安なものです。親身になって話を聞いてくれるか、質問に丁寧に答えてくれるか、依頼者の気持ちに寄り添った対応をしてくれるかを確認しましょう。強引な契約を迫ったり、すぐに契約を決めさせようとしたりする業者は避けるべきです。
  • 説明のわかりやすさ
    調査内容や方法、料金体系、法律的な注意点などを、専門用語を避け、素人にもわかりやすく説明してくれるかどうかも重要です。曖昧な表現を多用したり、煙に巻くような説明をする場合は要注意です。
  • 実績と経験
    具体的な解決事例や、過去の実績について尋ねてみるのも良いでしょう(もちろん、守秘義務があるので具体的な個人名は出せません)。長年の経験を持つ探偵事務所は、多様なケースに対応できるノウハウを持っている可能性が高いです。ただし、実績の過度な誇張には注意しましょう。
  • 契約書の明確さ
    口頭での約束だけでなく、契約書に全ての取り決めが明確に記載されているかを確認しましょう。特に、調査内容、期間、料金、キャンセル条件、報告方法、秘密保持に関する条項は入念にチェックしてください。
  • 探偵業者の倫理観
    依頼者のプライバシー保護に対する意識や、違法行為を行わないという強い倫理観を持っているかどうかも、信頼できる探偵を見分ける上で重要です。人権侵害につながる調査を拒否する姿勢を持っているか確認しましょう。
  • 口コミや評判
    インターネット上の口コミサイトやSNS、知人からの評判なども参考にすると良いでしょう。ただし、匿名性の高い情報はすべてを鵜呑みにせず、あくまで参考の一つとして捉えることが大切です。

これらのチェックポイントを総合的に判断することで、探偵業法を遵守し、あなたの問題を真摯に解決しようと努力してくれる、信頼できる探偵事務所を見つけることができるはずです。焦らず、複数の選択肢を比較検討する姿勢が成功への鍵となります。

調査結果と証拠の取り扱いについて

探偵に依頼する目的は、多くの場合、「確かな証拠」を得ることにあります。この証拠は、法的な問題解決(例:離婚訴訟、損害賠償請求など)において、あなたの主張を裏付ける非常に重要な役割を果たします。しかし、探偵が収集した調査結果や証拠が、どのように扱われ、どのように法的に有効となるのかを知っておくことは非常に重要です。

ここでは、探偵が提供する調査報告書の重要性と、得られた証拠の法的有効性について解説します。

調査報告書の役割と重要性

探偵による調査が完了すると、通常、依頼者に対して「調査報告書」が提出されます。この調査報告書は単なる活動記録ではなく、以下の点で極めて重要な役割を担います。

  1. 調査の事実を明確にする公式文書
    調査報告書は、いつ、どこで、誰が、何をしていたのかといった調査の事実関係を、時系列に沿って詳細に記述した公式文書です。これにより、依頼者は調査の全容を正確に把握できます。
  2. 証拠の根拠となる詳細な記録
    報告書には、写真や動画、音声記録などの証拠資料が添付され、それらがいつ、どのように収集されたかが明記されます。これにより、得られた証拠の信憑性や状況証拠としての価値が高まります。
  3. 法的な手続きにおける重要な資料
    離婚訴訟や慰謝料請求など、法的な紛争解決を目指す場合、この調査報告書は裁判所や弁護士にとって、事態を理解し、法的な戦略を立てる上で不可欠な資料となります。具体的な事実関係と証拠がまとめられているため、スムーズな手続きに繋がります。
  4. 依頼者の心理的負担の軽減
    調査結果を整理された形で受け取ることで、依頼者自身が情報を整理しやすくなり、今後の対応を考える上での精神的な負担を軽減する効果もあります。

優良な探偵事務所は、単に証拠を集めるだけでなく、裁判資料としても通用するような、詳細かつ明確な調査報告書の作成に力を入れています。報告書のサンプルを見せてもらうなどして、その品質を確認することも、探偵選びの重要なポイントです。

証拠の法的有効性

探偵が収集した証拠が、実際に裁判などで「法的有効性」を持つかどうかは、依頼者の目的達成において極めて重要です。結論として、探偵が適法な手段で収集した証拠は、多くの場合、法的に有効な証拠として認められます。

法的有効性が認められる主な理由と、注意すべき点を見ていきましょう。

法的有効性が認められる理由

  • 適法性の確保
    探偵業法は、探偵が違法な手段を用いて調査を行うことを厳しく禁じています。前述の通り、盗聴や不法侵入など、犯罪行為に該当する手段で得られた証拠は、原則として法的に有効とは認められません。しかし、尾行、張り込み、公開された場所での撮影など、探偵業法やその他の法令に違反しない適法な手段で収集された証拠であれば、有効と判断される可能性が高いです。
  • 客観性と具体性
    プロの探偵が作成する調査報告書には、いつ、どこで、誰が、何をしたかといった具体的な情報が客観的に記録されています。写真や動画といった動かぬ証拠が添付されることで、その信憑性が高まり、裁判官や弁護士が事実関係を判断する上で説得力のある資料となります。
  • 第三者性
    依頼者自身が収集した証拠は、感情が入り混じったり、主観的であると見なされたりする可能性があります。しかし、利害関係のない第三者である探偵が収集した証拠は、客観性が高く評価され、証拠としての信頼性が増します。

証拠の有効性を高めるために依頼者ができること

せっかく探偵に依頼して証拠を得ても、それが法的に無効と判断されてしまっては意味がありません。依頼者自身も、以下の点に注意することで、証拠の有効性を高めることができます。

  • 違法な調査を要求しない
    探偵業者に違法な調査を依頼することは、探偵業法で禁止されています。例えば、GPSを無断で取り付けることや、相手の住居に侵入して証拠を収集するよう求めることは、探偵業法に違反し、得られた証拠も無効となるだけでなく、依頼者自身も罪に問われる可能性があります。常に合法的な範囲での調査を依頼しましょう。
  • 契約内容を十分に理解する
    探偵との契約時に、調査の方法や範囲、どこまでの証拠収集が可能かなどを明確に確認し、合意しておくことが重要です。これにより、後から「こんなはずではなかった」という事態を避けられます。
  • 弁護士との連携
    特に法的な紛争を考えている場合は、探偵に依頼する前に弁護士に相談し、どのような証拠が必要か、その証拠が法的に有効となるかを確認することをおすすめします。探偵と弁護士が連携することで、より効果的かつ確実に、法的有効性のある証拠を収集できる可能性が高まります。

探偵が提供する調査結果と証拠は、あなたの問題を解決するための強力な武器となり得ます。しかし、その力を最大限に引き出すためには、探偵業法に基づいた適正なプロセスを経て収集され、適切に取り扱われることが不可欠です。信頼できる探偵を選び、彼らが作成する調査報告書を有効に活用しましょう。

よくある質問(FAQ)

探偵の調査結果は、裁判で証拠として使えますか?

はい、探偵が探偵業法などの法令を遵守し、適法な手段で収集した調査結果(詳細な調査報告書、写真、動画、音声データなど)は、裁判で証拠として提出し、採用される可能性が高いです。特に、客観的かつ具体的な事実が記録された報告書は、法的な手続きにおいて非常に有効な資料となります。ただし、違法な手段(盗聴器の設置、不法侵入など)で得られた証拠は、たとえ事実であっても法的に無効と判断されるため注意が必要です。

依頼者が探偵に信頼を寄せるために重要なことは何ですか?

依頼者からの信頼を得るためには、探偵業者側の「専門知識の提供」「迅速かつ正確な対応」「適切な料金設定」「秘密保持の徹底」が不可欠です。依頼者側としては、これらの点を見極めるために、探偵業届出の有無、契約前の重要事項説明の丁寧さ、見積もりの透明性、そして相談時の担当者の対応などを総合的に評価することが重要です。不明な点は遠慮なく質問し、納得した上で契約を進めましょう。

探偵業を始めるには、何か許可が必要ですか?

はい、探偵業を営むには、事前に営業所を管轄する都道府県公安委員会への届出が義務付けられています。これは「探偵業開始届出書」を提出することで行われ、届出が受理されると「探偵業届出証明書」が交付されます。この届出制度は、悪質な業者の排除と依頼者の保護を目的としています。正規の探偵事務所は、この届出番号をウェブサイトや事務所内の標識に明記していますので、依頼前に必ず確認しましょう。

探偵は依頼者の秘密をどこまで守る義務がありますか?

探偵業者は、探偵業法第10条により厳格な「秘密保持義務」を負っています。これは、依頼者の個人情報、依頼内容、調査対象者の情報、調査方法、そして調査結果など、業務上知り得たあらゆる秘密に及びます。この義務は探偵業を廃止した後も継続し、違反した場合には1年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑事罰が科せられます。依頼者のプライバシーと利益を守るため、探偵には高い倫理観と情報管理体制が求められます。

まとめ

この記事では、探偵業法とは何か、なぜこの法律が必要とされたのかという背景から、探偵が守るべき義務と依頼者の権利、そして信頼できる探偵を選ぶための具体的なチェックポイント、さらには調査結果と証拠の取り扱いについて詳しく解説しました。

重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 探偵業法は、依頼者を保護し、探偵業界を健全化するための法律です。
  • 探偵には「契約前の重要事項説明義務」や「秘密保持義務」など、多くの義務があります。
  • 無届営業や違法な調査を行う探偵には注意が必要です。
  • 公安委員会への届出確認、明確な料金体系、そして親身な対応は探偵選びの必須条件です。
  • 適法に収集された探偵の調査結果は、裁判でも有効な証拠となり得ます。

探偵への依頼は、あなたの人生における重要な決断となるでしょう。不安や疑問を抱えたまま、安易に業者を選んでしまうと、取り返しのつかない事態に陥る可能性もあります。この知識を武器に、「後悔のない探偵選び」を実現してください。

もし今、探偵への依頼を検討しているのであれば、まずはこの記事で得た知識を基に、複数の探偵事務所に相談し、疑問点を解消することから始めてみましょう。あなたの問題解決への第一歩を、安心して踏み出せるよう応援しています。

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